ちまたには、「大化の改新でっち上げ説」とか、いろいろとありますが、普通は、「蘇我氏の専横を止め、天皇家に政治の実権を取り戻し、律令国家を築く」ということを目的にして、「大化の改新」に先立つ入鹿暗殺が起こったとされています。新国家樹立のために、旧勢力を滅ぼしたとかなんとか言われてますよね。
アライが、ここで思ったのは、「ほんまか?」でした。いろいろと資料も読んだし、この後、平安時代へと時代が進むにつれて、日本は官僚型の国家になっていきます。天皇には政治の実権はない、そういう世界に。まあ、中大兄が鎌足と組んだことからそうなったのだとかいえなくもないですが、では、入鹿がつまりは蘇我氏があのまま実権を握っていたらどうなったか。結局、同じだったのではないかと思うんですよね。このころの、「唐」も、結局のところ、官僚型の国家ではなかったかと思うんですが、蘇我が目指したのもそうなんですよね、たぶん。
てことは、入鹿暗殺は、国家のあり方を問うたのではなく、誰が権力を握るかという争いだったと思うわけですよ。だからこそ、こういう話になりました。これから、大津皇子処刑までの五十年足らずをうめていこうと思っています。政治家としての中大兄や鎌足は、大変に冷徹で、かなり先まで見渡していますが、その一方で、確実に、自分の中にある暗黒の部分を満足させていきます。そのためには、手段も選ばないほどに。
これから、血なまぐさい事件が次々に起こります。正直、どこかに心温まる話のひとつでも転がってないのか、チクショウめ、という感じですが、がんばります。なお、できた話からアップという感じになりますので、作中の時間はわけわからないほどに前後すると思われます。
どうも、連載という形は向かないと思いますので、できたものから、今回の「乙巳」のように一気アップの連作形式になるでしょう。よろしくお付き合いくださいませ。